朝抹茶

「朝抹茶」。私はそう呼んでいるのですが、時々、朝少しだけ早起きをしてお茶を一服点ててから一日を始めることがあります。

 

季節によって表情を変える朝の光、お湯を注ぐ音、手に伝わるお茶碗の温もり、豊かなお茶の香り。
朝抹茶をしていると忙しい日々の中で左右に触れがちな感情が真ん中に整うような、心の余分なものが落ちて清められるような、そんな気がいたします。テーブル茶道の良いところは、覚えたお点前をそのまま自宅でも出来ることです。
お点前の練習も兼ねて「朝抹茶」始めてみませんか?

Imstagramでも時折「朝抹茶」の様子をご紹介しています。(#ゆい朝抹茶)


朝抹茶記


2020年1029

【十三夜】

良く晴れた空に、今宵の月を思いながら頂く一服。

お月見といえば、先ず思い浮かぶのは十五夜ですが、「後の月」といわれる十三夜もまた名月といわれます。

十三夜は満月の少し手前。

その少し欠けた姿を、床しく美しいものとして愛でる。不完全、不均等なものの中に美を見る日本人らしい感性。不足の美。

私にとっては、教室名の「風月」を十三夜を眺めながら決めたことから、やはり大切な特別な月となっています。

 

十三夜は別名「栗名月」といわれるので、

お供は栗のお菓子、たねやさんの「栗月下」を。まるで栗そのものを頂いているような味わいがとても好みで、毎年買い求めるお菓子のひとつです。

 

「十三夜に曇り無し」。

今宵は清かな月の姿に出会えそうです。



2020年101

【中秋の名月】

神無月朔日。中秋の名月。

清風明月。

今宵の美しい月を楽しみに頂く一服。

お供は「すすき野」鶴屋八幡製。

 

今月は十五夜と十三夜があるので、室礼もお月見に。すすきは水が上がりにくいので、湯揚げすると良いそうです。



2020年918

【秋風】

「秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる」藤原敏行 古今和歌集 169

 

空高く強い風の吹く朝に、思い出した一首。

今朝は「青柿」のお菓子でお茶を頂きました。

さやかには見えなくとも、枝葉の陰にはそっと秋の実り。

 

豊穣の秋も間も無く。 



2020年99

【隠逸の花】

九月九日、重陽の節句。

別名の菊の節句。

高貴に清雅に香る菊は

不老長寿の薬ともいわれる花。

お能の「菊慈童」は、罪によって流された慈童が菊の葉より滴る水を口にして七百年の時を生きる物語。

 

重陽の節句では長寿を願い菊酒を頂きますが今朝は菊酒の代わりに菊水とお茶を頂きました。

 


隠逸の花は菊の花のこと。

「風露新香隠逸花」

風露(ふうろ)新たに香る隠逸(いんいつ)の花。

 

お稽古で初めて目にした時に感動を覚えたお軸。

その同じお軸が、先日も掛けられているのを嬉しく懐かしく拝見していたところ、お稽古の終わりにお師匠さまからお話を頂き、来月、茶名拝受となりました。

 

何気なく目にしてきた紫陽花や菊などの花たち。

その美しさを改めて感じるこの頃です。 



2020年91

【長月】

長月朔日。

新しい月の始まり。

重陽の節句も近いので、

高橋敬典さんな燗鍋を使い、

菊の花びらを浮かべて菊酒風に飾ってみました。

お菓子は鈴懸さんの「鈴乃最中」、そして先日の余韻のお菓子。

 

静かに時を振り返るひと時。 



2020年823

【処暑】

二十四節気「処暑」。

暑さの和らぐ頃。

「夏と秋と行きかふ空の通ひ路は かたへ涼しき 風やふくらむ」

凡河内躬恒 古今和歌集168

 

歌の詞書は「みなづきのつごもりの日よめる」…つまり旧暦の水無月の晦(末日)、夏の終わりに詠まれた歌。

 

日が暮れると聞こえてくる秋の虫の声。

蝉の声、秋虫の声、行き交うように移ろう季節。

お菓子は秋の七草「萩、尾花(すすき)、葛、撫子、女郎花、藤袴、桔梗」から、星の形にも似た桔梗の花を。



2020年87

【立秋】

「かき分けて折れば露こそこぼれけれ 淺茅にまじる撫子の花」西行

 

朝そよぐ風は心持ち涼しく。

光は薄衣を通したように柔らかく。

立秋の朝。

今朝は秋の七草のひとつ「撫子」を。



2020年82

梅雨が明けて

ようやく聞こえてくる蝉の声。

やっと始まる短い夏は

既に秋の気配も含んでいるような。

 

早起きのご褒美。

蝉時雨の中、

今朝は朝顔の花を頂く。



2020年728

さらさらさら。

お茶を点てると、心が落ち着く。

余分な感情は消えて、一度真っさらになる。

ささやかな音や香りに気づき、

そこに季節の声を聞くことがある

 

お供は頂きものの「高橋の酒まんじゅう」。

優しい甘みにほっと和み、

円(まる)い心で一日を始める。



2020年724

【夏衣】

「夏まけて咲きたるはねずひさかたの 雨うち降らば移ろひなむか」

万葉集 大伴家持

 

まるで、まだ水無月のような空気感。

そろそろ夏空が恋しいと、

今朝は「夏衣」鶴屋吉信製で。 



2020年77

【星合の日に】

「天の川瀬ごとに幣を奉る 心は君を幸く来ませと」万葉集巻十 二◯六九

 

七夕。

今朝は、想う人の無事を祈り川瀬ごとに幣を手向ける歌を。

二星のためだけではなく、

大雨の被害がこれ以上広がらないことも祈って。 

 



2020年6月30

【水無月末日】

水の月 末日の朝抹茶。

夏越の祓えなので「水無月」を頂く。(お菓子の水無月は、氷室開きの氷に寄せたお菓子でしたね)

 

明日から文月、そして七夕を迎える。

私は星達の物語より、水辺で神衣を織る乙女、棚機津女を思う。

聞こえて来る滝の音。

降りてくる水の神。

水無月から水は繋がっている。 

 



2020年6月23

【平茶碗】

暑くなりそうな日には平茶碗で点茶。

目から涼を頂く。

本物そっくりの枇杷は空羽さんの上生菓子。

餡も枇杷のフルーツ餡で口福。

 

 



2020年6月16

【五月晴れ】

梅雨の合間の朝の光。

芒種の頃、田も青く染まっていく。

 

「五月雨の晴れ間にいでて眺むれば 青田すずしく風わたるなり」良寛

 

今朝はお茶の緑に青田を重ねて。

お菓子は先日のお稽古で頂いたもの。

 

 



2020年6月11

【紫の玉】

よく晴れた朝に雨を待つ花。

紫陽花には雨がよく似合うと思う。

東京もそろそろ梅雨入り。

間も無くしっとりとした花の風情を楽しめる頃。

 

 



2020年6月4日

【水無月】

月もあらたまって水無月、水の月。

そして朔日は氷室開きの氷の節句。

それに因んでお菓子には薄氷(うすらひ)をとも思いましたが、少し趣向を変えて今日は巣蜜を。

 

今のような菓子が現れる以前は、柿や栗などの果物や木の実が菓子でした。

巣蜜もまた自然の甘味、贈物。

器に取ると、氷室から削り出した氷に蜜をかけたよう。シャクっとした食感も面白い。

そういえば、蜂の巣は六角形の繋がり。

ご存知の通り五角形や六角形は魔除けの形。

先日の祓の茶会で使われた祓の形「鱗」は三角形。 

 

 

水無月、祓の月に、調べたいことが増えました。 

 



2020年5月30日

 【落とし文】

間も無く水無月という頃に和菓子屋さんに並ぶ「落とし文」。

見かけるとつい買ってしまうお菓子です。

面白い形ですよね。

 

「落とし文」は公にできないことを文に書いて、伝えたい人の近くに置いて拾わせた習慣。

それとオトシブミという虫が落とす葉の形が巻物のように見えることに由来するお菓子。

 

毎年この時期になるとお教室で

蛍にちなんだお干菓子とお出ししていました。

 

蛍は恋心に例えらることが多いので、

先程の落とし文は恋文かもしれませんね。と添えて。

 

「音もせで思ひに燃ゆる蛍こそ 鳴く虫よりもあはれなりけれ」源重之

 

今朝は自分のお稽古にと、肩衝、天目で濃茶を練りました。



2020年5月22日

 

【感謝】

「Thank you」の言葉と共に

少しだけ遅れて届いたカーネーション。

 

「ありがとう」

感謝の言葉は、いつ伝えても

誰に伝えても良いもの。

そして口にした人も

笑顔になれるもの。

 

お茶を習うと

「感謝」と「浄める」という言葉をよく使う。

 

日常でも、このふたつを意識すると、

穏やかにに過ごせる気がする。



2020年5月14日

【夏の朝】

鳥のさえずり。

明るい光。

立夏から小満に向かう頃。

万物を育む気は天地に満ちて。



2020年5月5日

【端午の節句・立夏】

お節句なので朝抹茶も少し改まり濃茶を練りました。

馥郁たる香り。

常緑の樹々を思わせる艶やかなお茶の色。

引き篭もっていますが、出来る範囲でお祝いを。



2020年5月3日

【喫茶去】

目覚めても起きずに微睡んでいると伝わる雨の気配。

 

新緑を輝かせる雨、翠雨。

瞼に浮かぶ外の緑の美しさ。

急に力を増した陽射しも今朝はひと休み。

 

のんびりと起きた休日のおめざ。

今朝はお点前はせずに喫茶去、さらさらと。

時に緩めて、時に締めて。

途切れさせないための秘訣。

 

お菓子は、少し素朴なものが頂きたくて「くるみ大福」を。週に一度の食材宅配の時にお願いしておいたもの。

餡にもお餅にもくるみが入っていて滋味豊か。

 

さて、今日は何をしましょうか。

ここ数年は、忙しなく走ってきたので、時間があるのは何より贅沢に思えます。

 



2020年4月30日

【ふるさと】

時々、心に染みる言葉に出会う。

音の響きに懐かしさのある言葉に出会う。

そんな言葉は、大和言葉のことが多いように思います。

日本の言葉は、大きく分けて三つ。漢語、外来語、大和言葉。

 

「開始」は漢語。

「スタート」は外来語。

「はじめる」は大和言葉。

 

大和言葉は、日本古来の言葉。

声に出すと、その音は、まるく、どこか懐かしい、と私は思うのです。

「うさぎおいし かのやま…」で始まる唱歌「ふるさと」が大和言葉で綴られた歌というのは、ご存知の方も多いでしょう。

 

なかなか、ふるさとに戻れない状況ですが、ゆっくりとその歌詞を味わいたいと思います。

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「ふるさと」

兎追いしかの山 小鮒釣りしかの川

夢は今もめぐりて 忘れがたき故郷

 

如何にいます父母 恙なしや友がき

雨に風につけても 思いいずる故郷 

 

こころざしをはたして いつの日にか帰らん

山はあおき故郷 水は清き故郷 

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朝抹茶のお供は、越乃雪本舗さんの「あまいおはじき」。

本物そっくりの有平糖のおはじき。

思い出すのは、幼い指で弾いたおはじき。

笑い声。

子供の頃の、お篭り遊び。

 



2020年918

【秋風】

「秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる」藤原敏行 古今和歌集 169

 

空高く強い風の吹く朝に、思い出した一首。

今朝は「青柿」のお菓子でお茶を頂きました。

さやかには見えなくとも、枝葉の陰にはそっと秋の実り。

 

豊穣の秋も間も無く。