先日の朝抹茶。
前夜から冷やしておいたお水で水点て。
お菓子は塩瀬総本家さんの「夕涼み」。
色とりどりのお菓子がある中でとてもシンプルですが、お店でひと目見て「あ、これは...。」と思い求めて来ました。
お菓子は瓢箪のような形に、朝顔に似た葉があしらわれています…そう、これは夜のとばりの降りる頃、仄かに白く開く夕顔の意匠。
だから菓銘は夕涼み。
夕顔と聞くと私が思い出すのは白洲正子さんの著作の中のエピソード、そして源氏物語。
白洲正子さんの「夕顔」のエピソードは確かこんな内容でした。
白洲正子さんは夕顔の花が好きで育てているが「夕顔の笑みの眉」が開くのを見たことがない。どのように開くのか知りたくて、ひとつの蕾をじっと見つめいたところ一向に開く様子がない。そのうちかすかに震えて首をたれ、仕舞いには蕾は地に落ちたと。その蕾だけかと3日続けたが結果は同じ「咲かずに落ちる」のだと。
思えば夕顔は繊細な花で、それは源氏物語に出てくる夕顔の印象と重なる。紫式部はこの花の本質をよく捉えている.......。
ふと読み返したくなり本棚から探して来ることに。
頁を捲っていると更に源氏物語も読みたくなり久しぶりに手に取ってみました。
夕顔のくだり。
『...切懸だつ物に、いと青やかなる葛の心地よげに這ひかかれるに、白き花ぞ、おのれひとり笑みの眉開けたる。...』
「源氏物語では夕顔は好きな女君のひとり。」以前そう私が言うと「夕顔の中では『白き花ぞ、おのれひとり笑みの眉開けたる』という表現が良いのだ」と教えてもらったことがあります。その人も白洲正子さんの本を思い浮かべていたのかもしれません。
『...白き袷、薄色のなよよかなるを重ねて、はなやかならぬ姿、いとらうたげにあえかなる心地して、そこと取り立ててすぐれたることもなけれど、細やかにたをたをとして、ものうち言ひたるけはひ、「あな、心苦し」と、ただいとらうたく見ゆ。...』
源氏物語は現代語訳もたくさん出ているけれど、私は原文の音の響きが好きなのでできるだけ原文も読む(というか味わう)ようにしています。もちろん意味の分からないところは解釈を見ます.....。
朝抹茶の菓銘から白洲正子さんの本、そして源氏物語。暑い日中、外出の代わりに気の向くままの読書の散歩。こんな休日も良いのではと思うのです。